2011-08-26

ヤンテの掟 Jante Law

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↑本題と全然関係ないけど、去年のニューハウンで撮った一枚。ニューハウンの建物の彩りはすごくデンマークっぽくて好き☆

ヤンテの掟って知ってます?

ヤンテの掟 
"Jante Law"( Aksel Sandemose, "A fugitive crosses his tracks" -1933)



1933年に発表されたデンマークの小説に出てくる架空の村、ヤンテ。その村では村人に対して、"あなたはたいしたことないんだから成功しても思い上がるな"という考えを強要するため、こんな法律を作ってしまった残念な村、という話。

なので、この掟の主語は、"あなた"です。
あなたは自分が特別だと思ってはいけない。あなたは人より賢いと思ってはいけない。…という掟(法律)です。
出る杭は打たれまくります。むしろ、法律としてこれを決めることで杭なんか出る前に出させませんよ、とでもいうような感じ。
確かにこんな法律がある村があったら、かなり残念な村だわ。

ただこの小説の作者はデンマーク国民の傾向として、成功した人に対してこんな風に考えてしまう風潮があるよね、と隠喩している、ちょっと皮肉的なメッセージがあるそうです。そしてこれは1933年の話なので、現代のデンマーク人としては、この風潮自体が古い価値観、ということで認識されているみたいです。
別に成功した人はその人なりにがんばって成功したわけだから、それでいいじゃん、と。

例えばデンマーク出身で有名なアクア( Aqua )のバービー・ガールが大ヒットしたときに、マスコミが「彼ら、とうとうフェラーリなんか乗りだしちゃったよ、金持ちぶってさ」みたいに紹介すると、「ヤンテの掟じゃあるまいし、別にいいじゃん」と思う人がいる一方で、やっぱりヤンテの掟のように杭を打ち始める古い価値観の人もいて、デンマークには住みづらくなって他の国に移住してしまう、みたいな感じ。



というわけで、デンマークでのヤンテの掟はこういうものだそうなんですが、実は私、始めてこのヤンテの掟を知ったとき、上記の正しい解釈ではなくて、むしろ完全に逆の解釈をしてしまったんです。

逆の解釈とは、自分が(私が)特別だと思い上がるのはよくないですよ。自分が(私が)人より賢いと思うのはよくないですよ。…という具合。
自分への戒めとして謙虚な態度を表していて、すごくいいなぁ、と。わたしも時々このヤンテの掟を思い返して、自分がそうなっていないかどうかチェックした方がいいね、とか、こういう考え方が根本にあるデンマーク人は、なんだかいいなあ。なんて思ってました。
その時のエントリー

解釈としては、全く逆ですよね。
だけど改めてこれを読んでも、どうもそんな感じに読めてしまう。


1 自分が特別だと思い上がるなかれ。
2 自分が人より善良だと思うなかれ。
3 自分が人より賢いと思うなかれ
4 自分が優秀だと自惚れるなかれ。
5 自分が人より知識豊富だと思うなかれ。
6 自分以上の人間はいないと思うなかれ。
7 自分が何でもできると思うなかれ。
8 他人を笑うなかれ。
9 他人のやさしさに期待するなかれ。
10 他人に何かを教えられると過信するなかれ。


で、デンマークでのヤンテの掟に関して昨日の夜、彼に散々質問しまくり30分以上かけて解説してもらってようやく、背景も含めて正しい解釈を理解したわけです。
ただ、日本語で「ヤンテの掟」を検索すると、けっこう多くの人が私と同じく「いい話だよね、こういう考えがあるデンマークって、スバラシイね」と解釈をしてることがわかりました。

これってなんでだろう?と思って考えてみた結果、自分なりに答えが出たので記録しときます。

まず、日本の社会でこの「めちゃめちゃ謙虚な感じ」は美徳とされるのが一般的だからかな、というのが私の答えです。
あと翻訳にあえて主語がないので、この日本の美徳感を背景に持ちながら読むと、自然と「私」を主語として考えてしまう、というのも逆の解釈につながる要因かと。


自分が(=私が)特別だと思い上がるのはよくない。自分が(=私が)人より賢いと思うのはよくない。


っていう、自分への戒めの感じですね。

だけどこの話、正しくは、

あなたは、自分が特別だと思ってはいけない。あなたは、自分が人より賢いと思ってはいけない。


っていう、人間が持つ妬みから発生する他人への強要を表してます。

原文のデンマーク語では、「あなた(=du)」が主語として明記されてるそうです。また、英語のwikipediaでもYouが主語で翻訳されてるので、たぶん英語で読めば逆の解釈はしないかも。

Jante Law


Don't think you're anything special.
Don't think you're as good as us.
Don't think you're smarter than us.
Don't convince yourself that you're better than us.
Don't think you know more than us.
Don't think you are more important than us.
Don't think you are good at anything.
Don't laugh at us.
Don't think anyone cares about you.
Don't think you can teach us anything.



そんなわけで、ヤンテの掟に関する正しい解釈がわかったのと、誤解の謎も解けてスッキリしたよ、という話でした(^〜^)

結論:
たぶん、人間ある程度謙虚な態度は必要なので、自分への戒めとして考えるのもいいんだと思います。ただ、デンマークでも日本でもどこの国の人であっても、人間に備わっている妬みの感情っていうのはあるわけですが、それを他人に「謙虚になれ」と強要するのはいただけないね、ということかなと思いました。
あと、国によっては「謙虚な感じ」は特に美徳でもなんでもない文化もあると思うので、そういう国の人にはこのヤンテの掟がどう解釈されるのかもちょっと興味深いですわ。

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