2010-04-29

インバウンドプロモーションについて最近思うこと

1〜2年前くらいからお仕事で、「中国の団体観光客を集客したい」というお話が増えています。
いろいろな方からお話を聞くと、ここには様々な要因があります。

  • 国内の消費はここ数年冷え込む一方
これはほとんど全ての個人消費者向け業種にあてはまるようです。

日本人の旅行先が海外ではなく国内が人気、ということはありますが、それでも将来的な人口の減少(少子高齢化)などもあいまって、なかなか楽観視はできない。
旅行のみでなく、個人消費に関してはほとんど同じような状況ですよね。

  • 中国人観光客の消費は半端ないらしい
一度の訪日で、一人あたりの消費額は何十万、という富裕層がたくさんいるらしいので、この人たちに来てもらいたい、という話。
これは現状では法の規制でやっぱりお金持ちしか日本に来れない仕組みになっているので、ある意味当然の状況です。

中国はまだ日本への旅行が解禁されて間もない状態で、実際に訪日できる人が限られています。
法律は向こう数年間でおそらく緩和されていき、確かにこの人口は増えていくのだと思うのですが、日本側の対応として、「だからとにかく団体客を誘致するビジネススキームを整えよう!」という通りいっぺんな風潮に、やや違和感を感じます。
着目点は、そこだけ?みたいな。

私たち日本人が海外旅行に自由に行けるようになって、すでに何十年もたっています。今でもツアーガイド付きの団体旅行は存在しますが、少なくても私の周りでは自分で飛行機と宿泊先を手配して、現地で何をするかは自分で決める、という個人旅行のスタイルを選ぶ人が多い。
旅行に慣れていれば慣れているほど、このスタイルが多いと思います。

これは個人的な感想ですが、ガイド付きの団体旅行に参加すると、ほとんどすべてをガイドさんに任せられるので心配がない反面、必ずお土産屋さんめぐりに強引に連れて行かれ(ツアーに組み込まれている)、貴重な旅行の時間なのに興味のないものをみなければならない という状態になることが経験としてわかっているから、団体旅行を敬遠する、ということがあると思います。

団体客を送客して、売り上げに応じた(もしくは送客人数に応じた)マージンでビジネスが成立する、というのはもちろん仕組みとしてあるのですが、それが観光客にとって楽しいことかどうかは全く別問題です。

どこの国にも存在する仕組みだと思うし、もちろん日本の観光施設でもあります。
これを否定したいわけではないです。

ただ、私たちは既に自分たちの海外旅行経験から、「何が楽しくて旅行に行くのか」ということは感覚的にわかっているはずで、それをインバウンドに対して実現してこそリピーターの獲得につながっていくのではないか、と思うわけです。
わざわざ旅行者にとって楽しくないスキームを、「儲かるから」という理由だけで実行してしまうのか?という違和感です。

「何が楽しくて、旅行に行くのか」を改めて考えてみると、
旅行に行くこと=その土地の文化を体験すること
文化=人に触れる、その土地特有の体験をする、その土地のものを食べる、そこにしかないものを見る、触れる、感じる、理解する

っていうのがあると思います。

ネットがあるので、情報自体は行かなくてもすぐに手に入ります。
本物を体験してこそ、旅行に行く意味がある。そしてそれを楽しいと思うことが、旅行の醍醐味だと思うのです。

法律の規制さえなければ、最終的にはここに行き着くので個人旅行を好む人が増えてくる、ということになります。

そうすると、本物を体験してもらうためにどんな仕組みが必要か、ということが将来的にはやっぱり必要になってきます。
しかし仕組み化された体験は厳密にいえば「本物」から遠ざかっていくので、経験価値としては下がることが否めないのですが、「体験したいけど、個人で手配は難しい」という側面のある体験は大きな付加価値をつけることができるので、そこにビジネス化のチャンスがあるのではないかと。

インバウンドでいえば、例えば予約が必要な体験は言葉の問題があるので、手配のハードルがあがります。
また、一般家庭を見てみたい・普通の日本人と話してみたいという部分は、知り合いがいない限りけっこう難しい。

単純に大勢の人を呼び込んで、お金を落としてもらえればそれでいい、みたいなスキームではなく、旅行の醍醐味がわかっているからこそ、価値の核の部分をついたビジネススキームが必要だなと最近強く思います。
すでにそういう方向で事業を進めている方にもお会いすることがあるのですが、まだプロモーションまでに至っていないようです。
将来的に、そのスキームで成り立つサービスを各国の「個人消費者(旅行者)」にきちんと伝えていくことが重要だなと思います。